2014年9月18日

パワーを得るためにどんなモーターを作る(探す)か?

前回、前々回の記事で、モーターをハイパワー領域で使うためにはKvで計算される無負荷回転数の半分~7割くらいのところをホバリング回転数にあわせるのが良い、ということがわかりました。

miniCP-2Sの場合で実例と比べると、ローター回転数5000rpmを目指したとして、メインギア64T、ピニオン8Tとするとモーターの回転数は40000rpmです。バッテリーは2Sを使うとして、バッテリー内部抵抗の電圧降下分などがあって7Vくらいがモーターにかかっていると考えて、無負荷回転数の80%でこれを実現するには  7142Kv のモーターがあれば良いことになります。

実際に使っていてぶっちぎりに良いパワー感を得られるモーターはHP06の6800KvとHP08の7700Kvなので、だいたい理にかなっているようです。HP06の場合は80%よりもう少し上で回っている可能性もあり、相当に電力効率が良さそうです。実際に回しててもぜんぜん熱くなりません。



こんな具合に、2SでminiCPを飛ばすなら狙うKvは7000~9000Kvが良かろう、というところは決まったとして、問題はトルクがそれに見合うだけ出ているかです。

今までの回転数の議論は、あくまでそのモーターの一番パワーが出る箇所を使いましょう、というだけなので、その上で十分なトルク、すなわち十分な最大パワーを持ったモーターを使わないと良い性能は出ません。

nobさんの今日の記事ともかなりかぶるのですが、モーターのトルクが強いためには

  • 電流がたくさん流れる
  • 巻き線のターン数が多い
  • 磁石が強い、または鉄心のアシストで磁力が強い

などの要素が考えられます。
ここで一昨日からお世話になっているマブチモーターのflash資料を参照しますと、性能の変化要因というセクションで、巻き線の太さ、ターン数、磁力についてそれぞれ単体で変化させたときの特性曲線の変化がビジュアルに説明されています。

巻き線ターン数が変化した場合、巻線径が変化した場合というページによると、ターン数を増やした場合には、静止トルクは変わらず無負荷回転数(すなわちKv)だけが下がります。ターン数が増えれば磁束も比例して増えるはずなのでこれは一瞬意外に思いますが、ターン数が増えた場合は線の長さも比例して増えるので、巻き線抵抗も比例して増え、静止電流=静止トルクを決める電流が反比例して下がるため、効果がきっちり相殺してトルクは変わらないという結果になってしまいます。

特性グラフの横幅が同じでNのグラフがターン数を増やすにつれ低い位置に下がっただけ、という結果なので、N*Tで得られるパワーは単純に全域で下がります。

(モーター単体の性能としてはマブチの説明グラフどおりですが、実際にヘリに載せる場合はリポの内部抵抗とESCの抵抗が加算されるので、ターン数が2倍になっても回路全体の抵抗は2倍までは増えません。なので静止トルクだけは少し増えるかもしれませんが、全域でのパワー低下を補うほどの効果があるとは思えず、やはりパワーは低下方向だと思います)

したがって手巻きモーターを作る場合、ターン数を増やすのはトルクアップではなく狙ったKvまで回転数を下げるためにやるんだと割り切ったほうが良さそうです。



線径の効果は逆に、線を太くすると無負荷回転数N0は変化せずにトルクだけが増えます
これはモーターの設計上とても便利な性質です。ある巻き方で狙ったKvが得られているモーターがあったとしたら、そのモーターの線をほどいて、どうにかして太い線(または細い線のダブル巻き)で同じ回数巻くことができれば、同じKvのままきっちりトルクとパワーが増えます。

まあ、マイクロモーターの場合そんな余地は無い場合がほとんどですけどね…




そんなこと言ったらじゃあなんでAEOのモーターは駄作ばかりなのにHP0xはあんなに高性能なんじゃ! という疑問に答えてくれるのがマグネットの種類の比較ページです。

マグネットが強いほど、無負荷回転数N0つまりKvは下がり、逆に静止トルクTsは上がります。15000Kvくらいでいまいちトルクが足りないモーターを持ってきて、磁石だけどうにかして強くできれば簡単に理想のモーターが作れそうです。

既存のモーターを改造して手巻きする場合にはここはどうにも変更しようがないところですが…


しかし実際にHP06やHP08を触ってみると、露骨に他のモーターよりコギングが強いです。これは磁石が強いのか、中に入ってるコイルを巻く積層コアの磁化されやすさが強いのか判断がつきませんが、とにかくハイパワーなモーターは何らかの理由で磁力が強くできていそうです。

逆に考えると、巻き方が気に入らない駄作でもなんでもいいから、コギングがなるべく強そうなモーターを持ってきて、そこでKvが狙った値になるような巻き数を見つけて、最後にコアの隙間が許す限り太い線でその回数ぶん巻いてやれば、可能な限りのハイパワーモーターが得られそうです。

手持ちの残念モーターでは、HP08の1S版や、C05XLの10800Kvあたりのコギングが強いので面白い候補になりそうな気がします。

5 件のコメント:

  1. Sachiho さんの一連のシリーズ?とnobさんの記事を拝見して、
    細かいことは全然解りませんけど・・・(^○^;)

    目標よりちょっと高めのKV値のモーターの、
    巻き線径が半分の線を2倍束ねて巻くと、線の表面積が増えて、
    断面密度が上がった分、巻き数がちょっと増やせて、
    狙ったKV値になって、トルクが大きいモーターになりそうな気がするんですけど・・・どうでしょうか?(^_^;)

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    1. うーん、確かにくどくど無駄に長く書きましたけどまとめるとそんな感じですね(笑)
      巻き数が増えてもパワーは上がらなくて、線をいかに太くするかが勝負!というのがわかったのが収穫です。
      なるべく小さくて磁石が強いモーターを作る方法がわかればいいんですがー。。

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  2. パイロン機ですが、私は重さで選択してます
    経験的に同等のスペックに見えても、重いモーターの方がパワフルですね
    マイクロヘリに当てはまるかどうかは不明ですが

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  3. クマー隊です。
    あとあれですねー。
    パワーのあるいいモーターは、磁石とコイルの隙間がせまいです。

    ちなみに、わらしもMOさんと同様、重量をパワーの目安にしています♪

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  4. 遅くなってごめんなさい。お二方とも、先人の知恵をありがとうございますー。
    そうですよねぇ。構造おんなじでモーターの軸方向の長さサイズを増やしていけば、少なくとも重さに比例してトルクを増やすことはできるはずなので、設計や素材で改善できるところは頑張った上での勝負になれば重さ∝トルクになるのが自然なのかもしれません。

    ただマイクロヘリの場合、重さの割りによわっちいモーター(AEOのいろいろ)や、電流をバカ食いするけど大きさの割りに確かにパワーがでる(HK14000とか12000)があったりして、どのあたりが限界なのかよくわからない面はありますねー。

    磁石とコイルの隙間は気付きませんでした。磁石が強ければ低回転ハイトルクになるのは間違いないので、磁石を大きくするのが難しいとしたら隙間は重要な要素かもしれませんねー。手持ちのモーターをいろいろ比べて考えて見ます。

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